企業と一般人との感覚のズレ。

 Winny製作者が逮捕されたのはネットに常接(常時接続)している人間にとっては衝撃的な事件である。一部の論評ではソフト製作者の罪は問えないという意見があるものの、ニュースの風潮はあくまでも「悪い」という視点で流されている。しかし、どうしても悪いとは思えない。

 私はPCのディスプレイで映画を見ることが苦痛であり、また画質や字幕に納得がいかないため、Winnyをほとんど使うことはなかった。また、Winny上では偽装されたファイルもたくさんあるため、DLの手間が割に合わない。いったい、どれほどの人間がWinnyで映画をDLして見たのだろうか? そういったことを示すデータは存在しない。(知っている方がいれば教えてください)

 また、P2PがCDの売り上げの減少につながっているというのも大きな間違いではなかろうか?実際にヒットチャートを観察すればよくわかる。90年代とはセールスの動き方が明らかに変わってきていることに。90年代に1年以上も週間チャートに入ってくる曲があっただろうか?「世界に一つだけの花」や「さくら」などは長期にわたってセールスを挙げている。ここまでの曲でなくても大塚愛の「さくらんぼ」や一青窈の「ハナミズキ」なども数ヶ月以上に渡りトップ10に入っている。こういった人々の心に響いている曲はちゃんと売れてるのだ。90年代の使い捨て的な楽曲の提供、すなわち流行りそうだからというセールスの方法はすでに死んでいるのだ。人々の意識の変化に気付かない音楽業界は自らの食い扶持が減ったことをP2Pソフトのせいにしているだけではないだろうか?

 P2Pではないが、mp3という圧縮規格ができて、CDを自らで焼けるまでになり、私の音楽ライフは一変した。それまでは音楽はほとんどラジオなどから聞くだけだった。特に音楽に執着があるわけではないので、自宅にCDが増えて手狭になることがイヤということもあり、買うこともレンタルすることもほとんどなかった。しかし、現在はレンタルしてきたCDを圧縮しPCに保存することによりスペースを取られることもなく音楽を聴くことができる。また、自分のお気に入りの曲を一枚のCDにすることで、ドライブや休日の余暇にも友達と楽しむことができる。こういった便利になったという話やmp3ウォークマンやCDを焼けるドライブがこれだけ普及していることをニュースやマスコミの意見としてはほとんど出てこない。とてもおかしな状況だ。普通の人は誰も音楽に著作物に金を払うことに対していやがっているわけではない。自らが便利だと思う商品を使いこなしているだけだ。そんな消費者心理に思いをやることもなく、自分たちの利益、企業中心の考え方ばかりを押しつけようとする今の風潮に我々はうんざりする。とともに、こういった消費者のニーズをきっちりと把握した新しい企業の出現を切望している。